歌詞考察・解釈
ほおづき
アーティスト: 吉澤嘉代子
こんにちは!今回は、吉澤嘉代子さんの楽曲「ほおづき」の歌詞を読み解いていきます。この独特なタイトルと、歌詞に繰り返し登場する「鬼」のモチーフが織りなす、深くも鮮やかな内面世界を一緒に探っていきましょう。
## 今回の謎
1. この曲のタイトル「ほおづき」は、歌詞に登場する「無様な氷鬼」「真暗な影鬼」「一人鬼」といった「鬼」のイメージとどのように繋がっているのでしょうか。
2. 歌詞の中で繰り返し形を変えて登場する「鬼」は、「私」のどのような側面や感情の変遷を象徴しているのでしょうか。その「鬼」は、なぜ「私」と切り離せない存在なのでしょうか。
3. 「始まりは貴方だった」「私だけが邪魔な世界」と歌われる「私」と「貴方」の関係性は、「私」が最終的に「一人鬼」となる物語の中で、どのような意味を持つのでしょうか。
## 歌詞全体のストーリー要約
1、孤独な魂の呼び声
隔たりを感じ、繋がりを渇望する
2、自己変革と破滅的な愛
内なる「鬼」を受け入れ、他者と深く繋がろうとする
3、世界への諦念と覚悟
無力さを自覚し、孤独な自己を確立する
この歌詞は、まず、他者との間に深い隔たりを感じ、しかし切実に繋がりを求める「私」の姿を描き出します。その渇望の中で、「私」は自己の内面に潜む「鬼」としての側面を自覚し、時に破滅的な形で他者との一体化を求めます。しかし、その願いは叶わず、最終的には「私」自身が世界にとって「邪魔」であるという諦念と、孤独な「一人鬼」として生きていく覚悟へと辿り着く、そんな物語が綴られているように感じられます。
## 登場人物と、それぞれの行動
この歌詞に登場する主な人物は二人、または「私」の内面世界に存在する象徴的な存在を含めて考えることができます。
* **私(一人称代名詞「私」)**:この歌詞の語り手であり、主人公です。深い孤独を抱え、他者との繋がりを求めますが、同時に自己の内面に「鬼」を飼い、その複雑な感情と葛藤しています。序盤では他者へ手を差し伸べることを懇願しますが、中盤では自己の持つ排他性や、時に破滅的な願望を露わにします。最終的には、世界への諦念と自己の孤独を受け入れ、「一人鬼」として生きる覚悟を決める存在です。
* **貴方(二人称代名詞「貴方」)**:「私」が語りかける相手であり、「私」の「始まり」とされる重要な存在です。歌詞全体を通じて「私」の行動や感情に影響を与える、かけがえのない他者として描かれています。しかし、その関係性は常に揺れ動き、依存と離反の間で葛藤が見られます。この「貴方」は、単なる恋人関係の相手に限らず、自己を形成した根源的な影響力を持つ人物や、あるいは理想化された存在、過去の自分自身、はたまた自己の内なる鏡像と捉えることもできるでしょう。
* **神様(特定の呼称はなし、概念として登場)**:Dメロで「ひたすらに神様はいないと微笑んでいたいの」と語られる、超越的な存在です。「私」がその存在を否定することで、既存の価値観や信仰からの脱却、あるいは究極的な孤独の中での自己完結を示唆しています。
この歌詞では、「私」の目線で物語が進行し、「貴方」との関係性や、自己の内面に渦巻く感情の揺れ動きが中心的に描かれています。性別を特定するような描写はないため、登場人物の性別は限定せず、普遍的な関係性として捉えるのが適切でしょう。
## 歌詞の解釈
### 孤独と渇望:薄い紙を重ねる月と痺れる手
歌詞の冒頭、Aメロの冒頭では「切った後の爪みたいな月が浮かんで」という印象的なフレーズで幕を開けます。これは、満ち欠ける月、特に欠けた月を象徴し、不完全さや喪失感、あるいは孤独を強く暗示しているようです。切られた爪のように、何かを失い、削ぎ落とされた後の「私」の心象風景が広がります。月はしばしば、人の内面や感情の移ろいを映し出す鏡として描かれますが、ここで浮かぶのはどこか物悲しく、自己の欠損を思わせる姿です。続く「何度薄い紙をかさねたら辿りつける」という問いかけは、他者との心の隔たり、コミュニケーションの難しさを表しているように感じられます。一枚一枚は頼りない「薄い紙」のように思える心の壁が、幾重にも重なり、容易には越えられない深い溝を形成している。それは、どれだけ言葉を重ねても、想いを伝えようとしても、決して相手に届かないという絶望的な感覚を呼び起こしますね。
そして、Aメロの後半で「寂しくて遠い場所へ今日連れ出してよ」と、他者への切実な願いが語られます。この「遠い場所」は、現実からの逃避であり、あるいは二人だけの秘密の場所、はたまた自己の内なる深淵へと誘う場所かもしれません。その場所へ「連れ出してほしい」という受動的な願いは、他者に依存したいという強い欲求を示しています。さらに「痺れる手を握ってもう離さないで」というフレーズからは、不安や恐怖で体が硬直し、感覚が麻痺するほどの極限状態にある「私」の姿が浮かび上がります。それでもなお、他者の温もりを、繋がりを求めてやまない、矛盾をはらんだ切実な叫びが胸に迫ってきます。手を握るという行為は、単なる物理的な接触以上の、深い精神的な支えや信頼の象徴として、この「私」にとってどれほど重要なものか。それが「痺れる手」であるからこそ、その渇望の深さが際立つように思います。
### 自己の内なる鬼と変貌:無様な氷鬼から真暗な影鬼へ
Bメロで語られる「私の中で生まれたものよ私と共に死んでくれる」というフレーズは、自己の内面で育まれた感情や思想、あるいはトラウマや秘密に対する強い執着を示しています。それは他者には決して触れさせない、自分だけの聖域のようなものであり、外界との接触を拒む排他性を感じさせます。「熱くなった身体もう誰にもさわられない」という言葉は、激情や情熱、あるいは病的な熱を帯びた「私」の内面を描きながら、同時に他者からの干渉を拒絶する強い意志を表明しています。この熱は、内側に閉じ込められた感情が噴出しそうになっている状態のようにも、あるいは外部からの刺激によって過敏になっているようにも解釈できます。「知ってる痛みがこみあげるの」というフレーズからは、過去の経験からくる深い傷、あるいは自己の本質として受け入れてきた苦痛が再び顔を出す様子が窺えます。この「痛み」は「私」のアイデンティティの一部として内面化されており、切り離すことのできないものです。
そして、「だって無様な氷鬼」という言葉で、初めて「鬼」というモチーフが登場します。これは、吉澤嘉代子さんの歌詞によく見られる、自己の内面を具象化したかのような表現です。「氷鬼」は冷たい、しかし「熱くなった身体」と結びつけられることで、内面に相反する感情を抱え込む「私」の複雑さを表しているようです。そして「無様」という自己評価は、他者からどう見られるかという視点、あるいは自己の不器用さや不格好さを受け入れている様子を示していると捉えられます。
#### (謎1への答え)「ほおづき」と「鬼」の連鎖する物語
ここで、タイトルである「ほおづき」と、歌詞に登場する「鬼」のモチーフについて考えてみましょう。吉澤嘉代子さんの楽曲には、日本の伝統的なモチーフや言葉遊びがよく見られます。「ほおづき」は漢字で書くと「鬼灯」。まさに「鬼」の字を含んでいます。盆提灯のように死者の魂を導くとされる一方で、その袋状の独特な形状は、何かを内側に秘め、包み隠しているようにも見えます。また、その赤く丸い実は、童謡「赤とんぼ」にも登場し、どこか懐かしさや、過去への郷愁、あるいは儚さや寂しさを連想させます。花言葉には「偽り」「私を誘って」といったものもあり、自己の内面に抱える複雑な感情や、他者への誘惑、そしてどこか掴みどころのない「私」の姿を象徴しているのかもしれません。
この「ほおづき」というタイトルは、自己の内面に潜む孤独、傷つきやすさ、そして他者への渇望といった、一見すると矛盾する感情のすべてを包み込む「私」という存在そのものを表していると解釈できます。そして、その内部に隠された、繊細で熱を帯びながらも不器用な自己像こそが、冒頭の「無様な氷鬼」なのです。「ほおづき」は、自己の内面世界全体を象徴する容器であり、「鬼」はその内部でうごめく、生々しい感情や変貌していく自己の姿を映し出す鏡のような存在。タイトルと歌詞は、深く連鎖し、自己の内奥へと読み手を誘います。なんて鮮やかな言葉選びなのでしょう。
### はしたない獣と灼けた指:欲望と自己認識の揺らぎ
サビの冒頭、「屈託ない笑みのような夢が終わって」というフレーズは、無邪気さや純真さ、あるいは理想的な自己像との決別を告げています。現実の厳しさや、自己の内面に潜む闇と対峙する中で、これまでの「私」は終わりを告げるのです。そして、「たった今からははしたない獣になる」と宣言されます。これは、社会的な規範や倫理から逸脱し、本能的な欲望や感情に忠実な自己を解放する姿を指しているのでしょう。「はしたない」という言葉には、世間体や品位を顧みない、あるいは慎みがないといった意味合いが含まれ、自己の内なる衝動に抗えなくなる様を表現しています。それは時に醜く、しかし真実の自己であると受け入れた覚悟が滲み出ているようです。この獣への変貌は、自己の内なるエネルギーが抑えきれずに外へと溢れ出すような、ドラマチックな変化を感じさせます。
続く「滑らかな輪郭を確かめてみても」という言葉は、自己の容姿や外面的な美しさ、あるいは社会的に理想とされる自己像を意識していることを示唆しています。しかし、それはどこか虚ろな、形だけの自己確認のようにも聞こえます。その一方で、「浅ましく灼けた指が目に余っている」というフレーズは、強い欲望や過去の過ち、あるいは罪の痕跡を鮮烈に描いています。「灼けた指」は、触れてはならないものに触れてしまったことへの後悔や、あるいは触れたいという衝動が強すぎて自らを傷つけた結果かもしれません。「浅ましい」という自己評価は、その欲望の醜さや、自己の持つ業を痛感している「私」の姿を浮き彫りにします。理想と現実、純真と欲望、滑らかな輪郭と灼けた指。この対比が、「私」の複雑で揺れ動く内面を鮮やかに映し出しています。
### 究極の共依存と別れの予感:真暗な影鬼の宿命
Cメロでは、「私の分まで泣かないで私が姿を隠すまで」と、他者への共感の拒絶とも取れる言葉が語られます。これは、自分の悲しみや苦しみは自分だけのものだという孤高の意識、あるいは相手にこれ以上悲しんでほしくないという複雑な愛情の裏返しなのかもしれません。自分が「姿を隠す」という言葉は、自己を消し去る、あるいは関係性の終わりを予感させます。しかし、その後に続く「胸と胸あわせてこの心臓を潰してほしい」というフレーズは、息をのむほど激しい愛情表現です。相手との究極的な一体化を求める、破滅的なまでの願望。それは、自己の存在を相手に委ね、共に滅びることを願うような、狂おしいほどの愛と依存の形を表しているように感じられます。心臓を潰すという行為は、生命の終わりを意味し、共に死んでしまいたいという強い衝動を想起させます。
しかし、その直後には「いつも途中で手を離すね」という、宿命的な諦めにも似た言葉が続きます。どれほど深く繋がりを求めても、最終的には自分から手を離してしまう。「私」自身が、関係性の終わりを引き起こしてしまうという自己認識、あるいはそうせざるを得ない自身の本質を悟っているかのような、悲しい告白です。この言葉は、繋がりを求める一方で、どこかその関係の永続性を信じきれない「私」の孤独を示唆しています。そして、「だって真暗な影鬼」という言葉で、再び「鬼」が登場します。この「影鬼」は、先の「氷鬼」よりもさらに内面に深く潜り込み、闇を抱え、隠れる存在としての「私」を表しているように思えます。「真暗」という修飾語は、その闇の深さ、孤独の深さを強調し、他者との関係性の中で避けられない離別や内面の深い部分を受け入れた「私」の姿を描き出しています。
#### (謎2への答え)変容する「鬼」が示す自己のアイデンティティ
歌詞に繰り返し登場する「鬼」は、単なる悪意の象徴ではありません。それは「私」の複雑な内面と自己のアイデンティティの変遷を象徴する重要なモチーフです。最初の「無様な氷鬼」は、他者との距離感に悩む不器用な自己と、内側に秘めた熱情との矛盾を表現していました。そして「はしたない獣」への変貌は、社会的な規範から逸脱し、本能的な欲望を解き放つ「私」の姿を示唆します。続く「真暗な影鬼」は、他者との関係性の中で避けられない離別や、自己の内面の深い闇を受け入れた姿であり、より本質的な「私」の姿に近づいたことを意味します。これらの「鬼」は、他者に依存し、繋がりを求める一方で、最終的には自分自身の孤独や欠損、あるいは独特な性質を受け入れざるを得ない「私」の姿を象徴しているのです。社会からは異端と見なされがちな「鬼」という存在を、自己の内面を深く掘り下げた結果としての「私」自身の姿として肯定的に受け入れようとする、そんな覚悟の現れと言えるでしょう。
### 諦念と微笑み:神なき世界で私だけが邪魔な存在
Dメロで描かれるのは、一転して穏やかな情景です。「心地よい風に包まれて」「やわらかな光が零れて」という描写は、自然の中での安寧や、束の間の平和を感じさせます。しかし、その穏やかさの中に潜むのは、「ひたすらに神様はいないと微笑んでいたいの」という、ある種の達観と諦念です。信仰の対象となる超越的な存在を否定することは、既存の価値観や道徳からの解放を意味する一方で、頼るべき絶対的な存在がないという究極の孤独をも示しています。その中で「微笑んでいたい」という言葉は、絶望の中で見出す微かな安寧、あるいは諦めを受け入れた上での静かな抵抗、自己完結的な幸福への願いを表現しているのかもしれません。もはや神にも救いを求めない、自分自身の内面だけで完結しようとする「私」の覚悟がそこにはあります。
ブリッジでは、「始まりは貴方だった」「お仕舞いも背負ってよ」と、「貴方」への明確な言及があります。「私」の存在、あるいは「私」の物語の全てが「貴方」との関係性の中で始まったことを示唆し、その関係の結末までもを「貴方」に背負ってほしいという、どこか一方的でありながらも、深く関わっていたいという願望が感じられます。そして、「私だけが邪魔な世界」という言葉が飛び出します。これは強烈な自己嫌悪の感情であり、あるいは自分の存在が周囲との調和を乱す異物であるという認識、自己の持つ複雑さや「鬼」としての側面が、既存の世界には馴染めないという深い葛藤から生じるものです。世界が「私」にとって邪魔なのではなく、むしろ「私」という存在が世界に対して異物であると感じる自己認識の表れ。この孤独な感覚が、「私」をさらなる深淵へと誘います。
#### (謎3への答え)「邪魔な世界」と「一人鬼」の受容
「私だけが邪魔な世界」という表現は、他者との関係性の中で、自己の存在が時に重荷となり、あるいは周囲との調和を乱す異物であると感じる「私」の内面を強く反映しています。それは、自己が抱える複雑な感情や、社会の規範から逸脱しようとする「鬼」としての側面が、既存の世界に馴染めないという深い葛藤から生じるものです。この世界観は、「私」が自分自身の独特な存在様式を、社会の枠組みの中でどう位置づけるかという問いを投げかけています。
しかし、「始まりは貴方だった」「お仕舞いも背負ってよ」という言葉からは、その「邪魔な私」を受け入れ、共に歩んでほしいという切なる願いも込められています。この矛盾した感情こそが、「私」の人間らしさ、複雑さを際立たせています。そして、物語の終盤で「私」は「一人鬼」という結論に至ります。これは、他者に依存しながらも、最終的には自分自身の孤独や欠損、あるいは社会から見れば異端とされる性質を受け入れ、独立した存在として生きる覚悟を示しています。世界に馴染めない「邪魔な私」が、他者との関係性や神なき世界での諦念を経て、自分自身の「鬼」としてのアイデンティティを最終的に受容する。それは、孤立を選ぶことではなく、自己を深く理解し、その上で世界と対峙する「私」なりの生き方を確立する道筋なのです。この「一人鬼」は、悲しい響きを持ちながらも、どこか強い決意と静かな自立を感じさせる、胸を打つ結末です。
### 終焉と新たな始まり:手の鳴る方へ、そして一人鬼
アウトロでは、「手の鳴る方へ」という神秘的な言葉で、未知への誘い、あるいは運命的な呼び声が聞こえてきます。「灯に掻き立てられる私を」というフレーズは、希望の光、あるいは破滅へと誘う誘惑の灯火によって、内なる衝動が掻き立てられる「私」の姿を描いています。その「灯」は、一体何を指し示しているのでしょうか。それは自己の内なる声、あるいは「貴方」からの呼びかけ、はたまた「鬼」としての本能が指し示す道なのかもしれません。
しかし、その誘いの源を問う「手招きしたのは...?」という疑問形は、その誘いの主体が誰なのか、何なのかが不確かな不安感を伴います。運命的な出会いなのか、自己の深層から湧き上がる衝動なのか、あるいは幻影なのか。その答えが見つからないまま、歌詞は「なんて気づけば一人鬼」という言葉で締めくくられます。この最後の「一人鬼」という表現は、物語の最終的な着地点であり、「私」が自己の孤独や、社会規範から逸脱した存在であることを受け入れた姿です。他者との関係性の中で「無様な氷鬼」や「真暗な影鬼」へと変貌してきた「私」が、最終的に「一人」であること、そして「鬼」であることを自覚し、そのアイデンティティを確立する。それは、悲しい孤独の受容であると同時に、他者に依存せず、自己の足で立つことへの静かな覚悟を宣言しているようにも聞こえます。この終わり方は、絶望ではなく、ある種の達観と、これから続くであろう「一人鬼」としての新しい生の始まりを予感させる、深い余韻を残します。
## 歌詞のここがピカイチ!
この歌詞がピカイチなのは、何と言っても「鬼」というモチーフの多層的な表現と、その変遷を通じて描かれる自己の内面世界への深い洞察です。一般的なラブソングや自己肯定ソングとは一線を画し、自己の複雑性、他者への依存と拒絶、内なる闇の肯定という、人間が抱える生々しい感情をこれほどまでに鮮やかに描き出している点は圧巻です。
「無様な氷鬼」「真暗な影鬼」「一人鬼」と、状況や感情の変化に応じて「鬼」の姿が様々に変化していく様は、まるで物語の主人公が成長(あるいは変容)していく過程を見ているかのようです。この「鬼」は、決して単純な悪役ではなく、「私」自身が抱えるコンプレックス、欲望、そして孤独の象徴として、私たち読者の心に深く響きます。特に、最終的に「一人鬼」という境地に至ることで、他者との関係性の中で自己を見つめ、最終的には孤独を受け入れながらも自立していくという、現代社会における個人のあり方を深く問いかけるテーマへと昇華されている点が、この歌詞の独自性と芸術性を際立たせています。
## モチーフ解釈
この歌詞において、最も重要なモチーフの一つは、やはりタイトルにもなっている**「ほおづき」**でしょう。すでに謎の答えでも触れましたが、改めてその意味合いを掘り下げてみます。
「ほおづき」は漢字で「鬼灯」と書かれ、これが歌詞に繰り返し登場する「鬼」のモチーフと直接的に結びついています。この植物は、お盆の時期に死者の魂を導く提灯に見立てられることがありますが、この歌詞においては、内に秘めた感情や、闇、そして自己の変容を暗示するメタファーとして機能していると解釈できます。袋状の独特な形状は、何かを内側に包み込み、隠している様子を思わせます。それは「私」の誰にも見せない秘密や、他者には理解されがたい複雑な感情、あるいは「私の中で生まれたもの」である「鬼」そのものを包み込んでいるかのようです。
「ほおづき」の花言葉には「偽り」「私を誘って」といったものがあります。これは、「私」が他者に対して見せる「滑らかな輪郭」という偽りの姿や、あるいは「寂しくて遠い場所へ連れ出してよ」と他者を誘いながらも、最終的には「いつも途中で手を離すね」と離れていく矛盾した行動と重なります。また、そのどこか寂しげな赤色は、歌詞全体に漂う孤独感や、内面に燃える熱情、そしてどこか物悲しい諦念の色合いと響き合います。 「ほおづき」は、自己の内面世界全体を象徴し、その中に「鬼」という自己の本質を宿す、まさに「私」という存在そのものを映し出す、深く美しいモチーフだと言えるでしょう。
## 他の解釈のパターン
### 1、究極の共依存と破滅に向かう「私」の歌
この歌詞を、とある二人の間に繰り広げられる、究極的な共依存関係とその破滅を描いた物語として読み解くことができます。この解釈では、「私」は「貴方」に対し、ほとんど病的なまでの執着と愛情を抱いています。
冒頭の「切った後の爪みたいな月」は、貴方との関係性の中で「私」が失ったもの、あるいは削ぎ落とされた自己の一部を暗示します。「寂しくて遠い場所へ今日連れ出してよ」という願いは、現実世界から二人きりの閉じた世界へと逃避したいという欲求の表れです。そして「痺れる手を握ってもう離さないで」という言葉は、貴方への絶対的な依存と、貴方を失うことへの極度の恐怖を示しています。
歌詞に登場する「鬼」は、「私」が貴方への執着によって変質し、狂気じみた感情に囚われていく姿の象徴です。「無様な氷鬼」は、貴方を手放せない脆さと、それ故に他を寄せ付けない冷酷さを併せ持つ「私」の姿。「はしたない獣」は、貴方への欲望を隠しきれず、社会の規範を破ってでも貴方を求める「私」の衝動です。そして「心臓を潰してほしい」という破滅的な願いは、貴方と一心同体になり、共に滅びることを望む、共依存の極致を表しています。「私だけが邪魔な世界」は、貴方との二人だけの世界こそが全てであり、それ以外の全てが邪魔だという閉鎖的な世界観を示します。最終的に「一人鬼」となる「私」は、貴方との関係性の中で自己を喪失し、貴方を失ったことで狂気の淵に堕ちてしまった姿、あるいは貴方との共依存という呪縛から一人抜け出すことのできない「私」の悲劇的な結末を暗示しているのかもしれません。この解釈では、「貴方」は「私」の全てを支配し、破滅へと誘う、抗いがたい運命のような存在として描かれます。
### 2、内なる声に導かれる自己解放と孤独の受容の歌
この歌詞は、他者との関係性ではなく、「私」自身の内面世界での葛藤と、そこからの自己解放、そして孤独の受容へと向かう物語として捉えることも可能です。この場合、「貴方」は実在の人物ではなく、「私」がこれまで囚われていた理想像や、過去の自分、あるいは自己を縛る社会的な規範の象徴と読み解けます。
「切った後の爪みたいな月」は、社会の期待に応えようとして削ぎ落とされてきた「私」の本質的な部分を象徴します。そして「薄い紙をかさねたら辿りつける」という問いかけは、世間体を重ねることで見失ってきた本当の自分への道のりを模索する姿を表しているでしょう。「寂しくて遠い場所へ今日連れ出してよ」という願いは、現状からの脱却と、自己の内なる声に従って未知の世界へと飛び出したいという自己解放への渇望を意味します。
「鬼」のモチーフは、社会の枠組みに囚われない、自由奔放な「私」の本能や、抑圧されてきた自己の闇の部分が表出したものです。「無様な氷鬼」は、不器用ながらも自己の感情を表現しようとする姿。「はしたない獣」は、社会的な抑制から解放され、本能のままに生きようとする「私」の真の姿です。「心臓を潰してほしい」は、過去の自分や古い価値観を打ち破り、自己を完全に変革したいという強烈な願いの表現と解釈できます。「ひたすらに神様はいないと微笑んでいたいの」は、既成の宗教観や道徳観から離れ、自分自身の価値観で世界を解釈し、自己を肯定する境地を示唆します。「私だけが邪魔な世界」は、社会の大多数とは異なる自己の存在を認識し、その上で自己を受け入れようとする姿です。最終的に「一人鬼」となることは、他者に依存せず、自己の深層と向き合い、孤独を選びながらも自分らしく生きていくという、力強い自己受容と覚悟の表明だと読み取れます。この解釈では、「手の鳴る方へ」は内なる声、本能が指し示す道であり、「灯」は自己発見への道しるべとなります。
## 歌詞の中で肯定的なニュアンスで使われている単語・否定的なニュアンスで使われている単語のリスト
**肯定的なニュアンス**
* 心地よい
* やわらかな
* 光
* 微笑む
**否定的なニュアンス**
* 切った後の爪
* 薄い紙
* 寂しい
* 遠い
* 痺れる
* 死んでくれる
* 熱い
* 誰にもさわられない
* 痛み
* 無様
* 氷鬼
* 屈託ない(笑みが終わるため)
* はしたない
* 獣
* 滑らかな(輪郭が虚ろなため)
* 浅ましい
* 灼けた指
* 泣かないで
* 姿を隠す
* 潰してほしい
* 手を離す
* 真暗な
* 影鬼
* 邪魔な
* 掻き立てられる
* 一人鬼
## 単語を連ねたストーリーの再描写
寂しい私は
切った後の爪みたいな月を見上げ
薄い紙を重ねても辿りつけない。
痺れる手を貴方に握ってほしいと願うが
私の中で生まれた無様な氷鬼は
熱くなった身体で痛みを知り
屈託ない笑みの夢を終え
はしたない獣になる。
浅ましい灼けた指を隠し
真暗な影鬼として姿を隠すが
心地よいやわらかな光の中で
神様はいないと微笑み
邪魔な世界で一人鬼となる。
手の鳴る方へ掻き立てられる私は
なぜ一人鬼なのか。