歌詞考察・解釈

CRACKS

アーティスト: 甲斐田晴

こんにちは!今回は、甲斐田晴さんの楽曲「CRACKS」の歌詞を読み解きます。タイトルに込められた「ひび割れ」の多面的な意味、そしてそこから生まれる希望について、深く掘り下げていきましょう。 ## 今回の謎 * 「CRACKS」が示す「ひび割れ」は、単なる破壊や終焉を意味するのでしょうか? それとも、再生への兆しなのでしょうか? * 「僕」は「ガラスで出来ていて」ひび割れた世界を語りながら、「貴方とだったら『汚れたい』」と願います。この「CRACKS」と「汚れる」という逆説的な表現に込められた、切実な願いとは一体何なのでしょうか? * 終盤で「愛すよりも正すよりも新しく壊し合って」と歌われる「CRACKS」。これは「僕」と「君/貴方」の関係性において、どのような未来を提示しているのでしょうか? ## 歌詞全体のストーリー要約 1、透明な世界の破綻と絶望感 完璧なガラス世界が脆く崩れ去る 2、不完全さの肯定と共犯意識 「貴方」と共に「汚れる」ことを選ぶ 3、新たな関係性の構築と傷の受容 「壊し合う」ことで得られる真の絆 この歌詞は、まず、私たち「僕たち」が生きる世界、そして自己の内面が「ガラス」のように脆く、容易に「ひび割れてしまう」現実を突きつけます。理想と現実の乖離、隠しきれない「歪んだ絶望」を抱えながらも、表面上は「正しく回る」世界で生きていました。しかし、「貴方」との出会いを経て、「僕」は「汚れる」ことさえ厭わない覚悟を決め、自身の不完全さや「歪んだ今日」を積極的に受け入れようとします。最終的には、傷や不完全さを「勲章」として輝かせ、既存の関係性をも「壊し合う」ことで、より深く、より本質的な絆を「貴方」との間に築き上げていく物語が描かれています。 ## 登場人物と、それぞれの行動 この歌詞に登場するのは、主に「僕」と「君」、そして「貴方」の3者です。 * **「僕」:** 歌詞の語り手であり、中心人物です。当初は自分自身を「ガラスで出来た世界」に生きる脆い存在と感じ、世界の不完全さや自分の「歪み」に絶望感を抱いています。しかし、「君」あるいは「貴方」との出会いを通じて、その不完全さを受け入れ、時には積極的に「汚れる」ことさえも肯定しようとします。最終的には、不完全な自分と相手を認め、「壊し合う」ことで真の関係性を築こうとする変革と成長を遂げます。 * **「君」/「貴方」:** 「僕」にとって、自己の変革を促す重要な他者です。歌詞全体を通して、「僕」が抱える絶望や孤独に対し、希望の光を差し込む存在として描かれています。「僕」が「汚れたい」「変わりたい」「壊し合いたい」と願う対象であり、深い絆で結ばれた相手であると解釈できます。この二つの呼び名は、同一の人物を指している可能性が高いでしょう。性別は特定されていませんが、「僕」が強く依存し、変化のきっかけとなる、かけがえのないパートナーとして描かれています。 ## 歌詞の解釈 ### 「CRACKS」が示す透明な世界とその崩壊(謎1への答え) Aメロ冒頭、私はまず「僕たち」という主語に注目します。これは「僕」個人の物語であると同時に、もっと普遍的な、私たち人間全体の脆さを示唆しているのかもしれません。「ガラスで出来ていて 体温で割れてしまったんだ」という表現からは、生きる上でのごく自然な営み、つまり「体温」という内なる熱や感情の動きによってさえ、完璧に見えた世界がいとも簡単に「ひび割れてしまう」様子が鮮やかに浮かび上がります。この「ひび割れ(CRACKS)」は、単なる破壊や終焉の兆候だけではありません。むしろ、完璧さを装っていたものが内側から崩れ去り、その本質的な不完全さが白日の下に晒される、一種の「真実の顕現」と捉えることができます。私たちが抱える理想と現実の乖離、社会の歪み、あるいは自分自身の内面に潜む矛盾。それら全てが、この「CRACKS」という言葉に集約されているように感じられます。 続くフレーズでは、「言わない 拒絶も後悔も」と、心の中に秘めていた感情、過去の過ちや諦念が静かに語られます。そして、「歪んだ絶望も その正体は 投影で食えない貴方のもの」という言葉。これは「僕」が自身の内なる闇、ネガティブな感情を「貴方」という存在に「投影」している、あるいは「貴方」という鏡を通して初めてその闇の「正体」を認識した、とも解釈できるかもしれません。つまり、「僕」は自分自身の不完全さや「歪んだ絶望」を、「貴方」という他者との関係性の中で見つめ直しているのです。この段階では、まだその「ひび割れ」は絶望と深く結びついています。タイトルの「CRACKS」は、まさに完璧な世界が崩れ去り、隠されていた不完全さが露呈する「破壊」の側面と、その露呈が新たな自己認識、ひいては「再生への兆し」という二面性を持っているのだと私は深く感じ入ります。この冒頭から、すでにこの曲がただの悲観的な歌ではないと直感させられるのです。 ### 理想の終焉と「汚れる」という逆説的な選択 次のパートで、「素晴らしい世界、本当 夢に 飢えない日々も 黙り込んでたって きっと正しく回る 今日も」と歌われる箇所は、まるで世界が完璧なふりをしているかのような、どこか冷めた視線を感じさせます。表面上は「素晴らしい」とされていても、本質的には「夢に飢えている」状態。そして、何も言わず「黙り込んでたって」、世の中は「正しく回る」と。これは、個人がどれだけ感情を抑え込んでも、あるいは不満を抱えていても、社会のシステムは変わらず回り続ける、という諦念にも似た感覚を表しているように思えます。この冷徹な「正しさ」こそが、かえって「僕」の心に「ひび割れ」を生み出しているのかもしれません。 そして、ここで再び「貴方」が重要な存在として登場します。「疑って 崩れ出す 貴方とだったら『汚れたい』と思う」というフレーズは、この曲における決定的な転換点の一つです。それまで「正しく」見えていた世界の欺瞞に「疑い」を抱き、内側から「崩れ出す」感覚。その中で、「僕」は「貴方」に対して、自ら「汚れる」ことを望むのです。「汚れる」という言葉は、一般的にはネガティブな意味で捉えられますが、ここでは全く逆の、強烈な肯定と受容の意思が込められていると感じます。それは、完璧主義や清廉潔白であることへの強迫観念から解放され、人間らしい泥臭さ、不完全さ、時には過ちさえも「貴方」と共に受け入れたいという、切実な願いの表れではないでしょうか。この「汚れたい」という言葉は、まさに清らかな「ガラスの世界」の「ひび割れ」を恐れるのではなく、その「ひび割れ」からにじみ出る人間的な感情や現実の側面を、恐れずに抱きしめようとする「僕」の覚悟を物語っているのです。他者との関係性の中で、時に傷つけ合い、時に矛盾を抱え、それでも共に歩むことを選ぶ。それは、表面的な美しさよりも、本質的な繋がりを求める究極の選択なのだと、私はこの言葉に震えを覚えます。 ### 感情の解放と「歪んだ今日」への情熱 サビへと移行するこのパートでは、一転して感情が爆発するような表現が続きます。「潤ったまま 透ける 潤んだまま 燃えだしている」という言葉は、抑えつけられていた「僕」の感情が、まるで透明なガラスの向こう側から、水滴のように「潤み」、そして熱く「燃えだして」いる情景を呼び起こします。これは、初期の「ガラスのひび割れ」が、今や内側に秘められた感情が表面に現れ、透明性を帯びた表現へと昇華しているようにも解釈できます。 そして、「春よりも ゴールよりも 歪んだ今日を欲しがって」という比喩は、この曲の核心を貫く、逆説的な美学を雄弁に語っています。一般的に、私たちは「春」のような始まりの希望や、「ゴール」のような達成感を求めがちです。しかし「僕」は、そうした普遍的な喜びや到達点よりも、あえて「歪んだ今日」を欲しがると言い放ちます。完璧ではない、むしろ矛盾や不完全さを抱え込んだ現在の状態こそが、僕にとっては何よりも価値があり、かけがえのないものなのだと。この言葉には、理想や世間の価値観に囚われず、ありのままの自分と、その時に感じている複雑な感情を、全身で肯定しようとする「僕」の強い意志が込められています。この「歪んだ今日」を全身で受け止め、それを欲しがる心こそが、前述の「汚れたい」という願いと深く深く結びついている。そして、その情熱が「燃えだして」いる。まさに魂の叫びが聞こえてくるような、そんなドラマチックなフレーズです。 ### 不完全な人生への「勲章」(謎2への答え) 再び訪れる静かなパート、「曇ったまま 晴れる 夢を見る 愚かさだけが傷を打つだろう 拙い人生に映える 勲章を」。私はこのフレーズを聞くたびに、人生の現実と、それでも抗い続ける人間の美しさを感じます。「曇ったまま 晴れる」という表現は、完全な解決や清々しいまでの「晴れ」ではなく、どこか影を落としながらも、それでも光を見出すような、まさに人生の複雑さを象徴しているかのようです。夢を追うことは、常に成功を約束するものではありません。「愚かさ」や、時に手痛い「傷」を伴うこともあるでしょう。しかし、その「傷」や「愚かさ」こそが、後の人生においてかけがえのない「勲章」となる、と「僕」は語るのです。 「拙い人生に映える 勲章を」。この言葉には、これまでの苦悩、失敗、そして「ひび割れ」さえも、自分自身の歴史として誇り高く受け入れようとする、驚くほど力強い意志が感じられます。完璧ではない、未熟で不器用な「拙い人生」だからこそ、その中で得た傷や経験は、より一層輝きを放つ「勲章」となる。そう、最初の「ガラスのひび割れ」が、ここでは「拙い人生」を彩る証、つまり「CRACKS」が、乗り越えてきた困難の証として「勲章」へと昇華されているのです。この「勲章」は、過去の傷や不完全さを隠すのではなく、むしろそれを輝かしいものとして胸を張り、自己を受容した確固たる証そのもの。まるで、傷ついた器が、その傷跡によって一層味わい深く、魅力的な美術品となるように。そう私は解釈します。 ### 理想の影から現実の「平凡」へ 間奏明けのパート、「きっと僕は鮮明な影を追いかけていたんだ こんな世にも平凡で馬鹿な生き方を選んだ」。ここで「僕」は、過去の自分を振り返ります。「鮮明な影」とは、手の届かない理想像や、あるいは誰かの輝かしい姿、漠然とした憧れのようなものだったのかもしれません。しかし、今の「僕」は、そうした理想を追い求めることをやめ、現実の自分、そして自分の選択を静かに受け入れています。「こんな世にも平凡で馬鹿な生き方を選んだ」という言葉は、一見すると自嘲的に聞こえますが、どこか清々しい諦め、あるいは新たな覚悟が込められているように感じます。それは、見栄や虚飾を捨て、自分の本質的な部分、人間らしい「平凡さ」や「馬鹿さ」を受け入れた「僕」の姿を表しているのでしょう。完璧なガラスの世界に固執するのをやめ、等身大の自分を選ぶ。これこそが「僕」の辿り着いた、新たな生き方なのだと。 そして続く、「ずっと前に冗談じゃないって突っぱねた 昨日を正しく間違えたことを庇い合おう」というフレーズ。これは、過去の過ちや、見ないふりをしてきた不都合な真実、つまり「僕」が「冗談じゃない」と拒絶した、向き合いたくなかった「ひび割れ」を、今度は「貴方」と共に受け止めようとする、切実な決意を示しています。過去の自分を「正しく間違えたこと」と再定義し、それを「貴方」と共に「庇い合う」。これは、二人で過ちや弱さを共有し、支え合うという、強固な共犯関係、そして真の信頼関係が芽生えていることを明確に示しています。お互いの「CRACKS」を受け入れ、共に歩む。そこに、真の愛情が育まれているのを感じます。 ### 孤独さえも抱きしめる「僕」の決意 「美しく笑った 君を 愛しく見れない僕を くだらない迷いを 一生引き摺り歩く 日々を」。このフレーズからは、「僕」の内面にまだ残る葛藤や、人間らしい弱さが率直に吐露されています。「君」の輝きを認めつつも、どこか自分自身を「愛しく見れない」という自己肯定感の低さが、まだ完全に払拭されていないことが示唆されます。そして、「くだらない迷い」を抱えながら生きていくという、人間誰しもが持つであろう不完全さの受容。これは、完璧ではない自分を「君」の前でも隠さない、むしろさらけ出すことで成立する、深く信頼し合える関係性への願望なのではないでしょうか。 さらに、「呪いになっていく 呼吸が 歌に出来ない 日々が 冷えていく この孤独に必要な気がしたんだ」という箇所は、まるで自分自身の存在そのものが「呪い」のように感じられ、感情を表現できない苦しみが続いていることを示唆しています。生きる苦しさ、自己表現の困難、そして心身が「冷えていく」ような孤独感。しかし、その後に続く「この孤独に必要な気がしたんだ」という一文が、その否定的な状況を一変させます。この孤独は、他者との表面的な繋がりではなく、自分自身と深く向き合うために「必要」な時間だったのだ、と。これは、孤独を乗り越えるだけでなく、孤独さえも自分の一部として肯定し、それを乗り越えるための糧とした「僕」の、深い自己受容の段階を示しているように私には思えます。この深い孤独の中からこそ、真の自己が見出され、他者との新たな関係性が築かれるのだという、哲学的な洞察が込められていると感じずにはいられません。 ### 究極の「壊し合い」が築く真の絆(謎3への答え) いよいよクライマックスへと向かいます。再び「貴方」が登場し、「失って揺れ惑う貴方の前なら『変わりたい』と思う」と、「僕」は切実に語ります。この「失って揺れ惑う」という「貴方」の姿は、「僕」自身の脆さや不完全さと深く共鳴し合います。だからこそ、「貴方」の前では、飾らない自分をさらけ出し、「変わりたい」という純粋な願望を抱くことができる。この「変わりたい」という思いは、単なる表面的な変化ではなく、自分自身の根源的な部分から、これまでの生き方や価値観を問い直し、真に自己変革を遂げようとする、魂からの叫びです。 そして、この歌の最も衝撃的で、しかし同時に最も美しい部分。「不完全に染まる 不自然にひび割れていく 愛すよりも正すよりも新しく壊し合って」。この一連の言葉は、まさに圧巻です。「不完全に染まる」ことは、人間としての宿命であり、その不完全さが「不自然にひび割れていく」様は、表面的な完璧さや虚飾を装うことへの、強烈な拒絶を意味しています。私は、この「不完全に染まる」という言葉に、人間らしさの本質を見出すような感覚を覚えます。 私がこの部分で強く胸を打たれるのは、「愛すよりも正すよりも」というフレーズが導く、その先の言葉です。一般的な恋愛関係や人間関係では、「愛し合うこと」や「互いの間違いを正し合うこと」が、健全な関係性の美徳とされます。しかし、「僕」はそうした既存の価値観を超えて、あえて「新しく壊し合って」という、一見すると過激に聞こえる選択を提示します。これは、互いの理想像や固定観念、過去の傷や脆さをも恐れずにさらけ出し、時には感情をぶつけ合い、既存の関係性を一度「破壊」することで、より深く、より本質的な繋がりを再構築しようとする、究極の愛情表現ではないでしょうか。表面的な優しさや、型にはまった「正しい」関係性だけでは到達できない、お互いの「CRACKS」すらも受け入れ、その上で共に生きるという、真に強い絆を築こうとする「僕」と「貴方」の関係性を示しているのです。この「壊し合い」は、ネガティブな破壊ではなく、二人で新たな地平を切り拓き、より強固な関係性を創造するための、創造的かつ勇敢な行為に他なりません。まさに、最初のガラスのひび割れが、二人の絆を深める「CRACKS」へと進化し、それが強固な関係性の唯一無二の証となる未来を提示しているのです。ああ、なんて切なく、そして力強い言葉なのでしょうか。 ### 「心象」に刻む「CRACKS」の輝き 最後のサビでは、再び冒頭の印象的な表現が繰り返されます。「曇ったまま 晴れる 夢を見た 愚かさだけが照らし出すだろう 傷を打ったまま映える 心象を」。しかし、この繰り返しは単なる反復ではありません。これまでの「僕」の変遷と、それに伴う解釈の深化が、このフレーズに新たな意味を与えています。ここでの「曇ったまま 晴れる」は、完全な解決ではなく、不完全な状態を受け入れた上での、一筋の光、希望を象徴しています。もはや、完璧な「晴れ」を目指すのではなく、「曇り」すらも自分の一部として肯定しているかのように。「愚かさ」や、時に負う「傷」を恐れずに夢を見ることが、やがて真実を「照らし出す」だろうという、確かな希望と信念が感じられます。 そして、この歌の結び。「傷を打ったまま映える 心象を」。これまでの人生で負ったすべての「傷」が、単なる痛みの記憶としてではなく、「心象」として心に深く刻まれ、美しく「映える」という表現は、すべての「CRACKS」が「僕」の人生を彩るかけがえのない経験であり、存在の証となることを力強く示唆しています。この歌は、決して完璧ではない、むしろ「ひび割れた」私たち人間の現実を真正面から受け入れ、その不完全さや痛みを、他者との深い関係性の中で「勲章」へと変えていく物語。絶望から始まり、最終的にはその「CRACKS」が、唯一無二の、そして何よりも強い絆の象徴となるという、胸を打つメッセージを私たちに届けてくれています。そう、私はこの歌から、私たちがいかに不完全な存在であるかを認め、その上でどのように他者と向き合い、生きていくべきかという、深遠な問いと答えを受け取った気がしてなりません。 ### 歌詞のここがピカイチ!:不完全さを「勲章」とし、「壊し合う」ことで築く絆 一般的なJ-POPのラブソングや応援歌では、ポジティブな感情や、傷を癒し、乗り越える「癒し」のメッセージが多く語られます。しかし、この「CRACKS」の歌詞がピカイチなのは、その「不完全さ」や「傷」、さらには「破壊」というネガティブに捉えられがちな要素を、真正面から肯定し、それを新しい価値観として提示している点にあると私は思います。 特に、「拙い人生に映える 勲章を」というフレーズは、失敗や弱さを隠すのではなく、むしろそれを誇り高く受け止める強さを示しています。これは、完璧であることや成功を至上とする現代社会において、人々に大きな勇気を与えるメッセージです。そして極めつけは、「愛すよりも正すよりも新しく壊し合って」という言葉。これは、単なる調和や表面的な愛情ではなく、互いの脆さや醜さ、あるいは根深い部分までをも露呈させ、時には激しくぶつかり合うことを厭わない、真に深い関係性を求めている証拠です。 このような「壊す」ことを通して「築く」という逆説的な表現は、非常に独創的で、一般的な「愛」の概念を大きく超えています。それは、互いの既存の枠組みを破壊し、再構築することでしか得られない、唯一無二の強固な絆への希求。この、あえて痛みを伴う過程を肯定し、その先に真の繋がりを見出す視点は、この歌詞が持つ唯一無二の魅力であり、まさにピカイチな部分だと私は断言します。 ### モチーフ解釈 「CRACKS」という言葉は、この歌詞において単なる「ひび割れ」や「亀裂」という物理的な意味を超え、非常に多層的なモチーフとして機能しています。 まず、楽曲冒頭では「ガラスで出来ていて 体温で割れてしまった」と、世界の脆さや「僕たち」自身の繊細さ、不完全さを象徴するネガティブなイメージで登場します。しかし、物語が進むにつれて、「CRACKS」は絶望の象徴から、自己受容や他者との深い関係性を築く上での不可欠な要素へと意味合いを変化させていきます。 「拙い人生に映える 勲章を」というフレーズでは、人生で負った傷や経験、つまりは「ひび割れ」が、むしろその人の歴史や成長の証として輝くポジティブな価値を持つものとして提示されます。ここでは「CRACKS」が、内面的な強度や人間性の深みを増すための通過儀礼、あるいは自己のアイデンティティを形成する重要な要素へと昇華されています。 そして極めつけは、「新しく壊し合って」という言葉に表れる「CRACKS」です。これは、互いの表面的な関係性や理想を「ひび割れ」させ、壊すことを恐れず、その過程で真の自分を露呈し、相手の不完全さをも受け入れるという、究極の信頼と愛情の形を示しています。ここで「CRACKS」は、既存の枠組みを打破し、より強固で本質的な絆を再構築するための「創造的な破壊」の象徴となります。 このように、「CRACKS」というモチーフは、歌詞全体を通じて、初期の「脆さ・破壊」から、中期の「受容・勲章」、そして終期の「創造・絆」へと、その意味合いを段階的に変化させています。それは、人間が不完全な存在であるという現実を認め、その「ひび割れ」を恐れることなく、むしろ積極的に受け入れることで、より豊かで本質的な人生や関係性を築き上げていけるという、力強いメッセージをこの曲に与えているのです。 ### 他の解釈のパターン * **パターン1:内面世界のメタファーとしての「CRACKS」** この歌詞全体を、語り手である「僕」の内面世界を描いたものと解釈することができます。歌詞に登場する「貴方」や「君」は、実際に存在する他者ではなく、「僕」自身の理想の姿や、あるいは心の奥底に存在するもう一人の自分、といった内面的な存在の象徴と捉えるのです。この解釈では、冒頭の「ガラスで出来ていて 体温で割れてしまった」という描写は、完璧主義だった「僕」の精神が、自身の感情や現実の摩擦によって「ひび割れて」いく様子を示します。 ストーリーは、自己の内なる矛盾や「歪んだ絶望」と向き合い、それらを「投影」するもう一人の自分を受け入れる過程となります。「汚れたい」という願望は、理想の自分を捨て、人間らしい弱さや醜さをも肯定する自己受容への渇望。「愛すよりも正すよりも新しく壊し合って」は、自己の内にある既存の価値観や固定概念を一度徹底的に破壊し、そこから真の自己を再構築していくという、孤独で壮絶な精神的旅路を描いていることになります。この解釈によって、「僕」の感じる孤独感や「歌に出来ない日々」といった表現が、内面世界の閉塞感や自己表現の困難さをより強く物語るものとして響いてきます。最終的に「心象」に映える「傷」は、自己変革の証であり、新たな自己像の確立を意味するでしょう。 * **パターン2:社会や体制への批判と、異分子の共鳴** この歌詞を、より社会的なメッセージを込めたものとして解釈することも可能です。「僕たち」が生きる「ガラスで出来た世界」は、均質で透明性を重んじる、管理された社会や既存の体制のメタファーと捉えられます。その中で「体温で割れてしまった」という「CRACKS」は、社会のルールや同調圧力からはみ出してしまう異分子や、システムが生み出す矛盾、あるいは抑圧された個人の感情の爆発を象徴するでしょう。 この視点では、「素晴らしい世界、本当 夢に飢えない日々も 黙り込んでたって きっと正しく回る 今日も」というフレーズは、表面的な安定や経済的豊かさの裏で、個人の夢や情熱が失われ、思考停止した大衆が「正しく」動かされている現状への皮肉と受け取れます。「貴方」は、そのような社会において「僕」と同じく「ひび割れた」部分を持つ、共鳴し合える異分子や反体制的な思想の象徴となります。「汚れたい」という願いは、体制順応を拒否し、社会の「正しさ」から逸脱して、共に抗う「共犯者」としての連帯感を示唆します。「愛すよりも正すよりも新しく壊し合って」は、既存の社会システムや価値観を破壊し、そこから新しい秩序やより人間的な関係性を共同で築き上げていこうとする、革命的なメッセージとして解釈の奥行きを広げます。この解釈では「孤独」は、体制からの疎外感を意味するでしょう。 ## 歌詞の中で肯定的なニュアンスで使われている単語・否定的なニュアンスで使われている単語のリスト * **肯定的なニュアンスで使われている単語:** * 美しい * 素晴らしい * 正しく(「正しく間違えたこと」のように逆説的に肯定) * 潤う * 燃える * 春 * ゴール * 晴れる * 映える * 勲章 * 鮮明 * 愛しく * 必要(「孤独に必要な気がした」のように逆説的に肯定) * 新しい * 心象 * **否定的なニュアンスで使われている単語:** * 喩える * ガラス(脆さの象徴) * 割れる * 言わない * 拒絶 * 後悔 * 歪んだ * 絶望 * 食えない * 飢えない * 黙り込む * 疑う * 崩れる * 汚れたい(この単語自体はネガティブだが、ここでは肯定的に使われているため、このリストにも記述) * 曇る * 愚かさ * 傷 * 拙い * 影 * 平凡 * 馬鹿 * 冗談じゃない * 突っぱねる * くだらない * 引き摺り歩く * 呪い * 呼吸 * 歌に出来ない * 冷える * 孤独 * 失う * 揺れ惑う * 不完全 * 不自然 * ひび割れる * 壊す ## 単語を連ねたストーリーの再描写 ガラスの僕たちは体温でひび割れ、 歪んだ絶望を抱え、飢えぬ日々を。 貴方と汚れたいと願う僕の心は燃え、 拙い人生の傷さえ勲章と映える。 平凡な昨日を庇い合い、 孤独に必要な「壊し合い」で、 不完全な心象を新しく築く。